ぼくの かんがえた さいきょうの ラズパイ クラスタ(物理(要資格 〜 その3 設計・施工編

3 回目の今回はいよいよ設計・施工を行ないます。

その 1 〜 構想編

その 2 〜 資格取得編

設計図

昨今は世界的な半導体不足の影響を受けたのか、ラズパイも手に入りにくくなってしまいましたね。

とはいえ、ラズパイクラスタを構築しようという気概をお持ちの方はすでに管理に困るくらいの数のラズパイをお持ちのはずです。今はラズパイをそんなにたくさん持っていないという方も、今から電気工事士の資格を取得したりしているうちにあっというまに半年くらい経ってしまいますので、その間に世界の半導体不足が少しは解消されたりするかもしれません(希望的観測)

ちなみに今回ご紹介する方法ですと、ラズパイに限らず Arduino や M5Stack、BeagleBone などのボードも同じ方法で整理できるというスグレモノです。

私の頭の中に妄想したラズパイクラスタの電気的な接続構成を図に起こすとこんな感じになります。 (頑張って Inkscape で書きました。本当は CAD とかが使えればもっとかっこよくて正確な図になると思いますが・・・😅)

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設計図

交流部分は黒い線は L、青い線は N のラインで緑はアースです。 直流部分は赤い線が + (VCC) で黒い線が - (GND) です。 水色の線は電力の線ではなく Ethernet ケーブルです。無線 LAN でも良かったのですがなんとなく無線 LAN のセットアップが面倒なイメージがあったのと、何より DIN レールに取り付けられるスイッチングハブを使ってみたかったので有線にしてみました。

3 つのスイッチング電源の入力電流は 1.8A + 0.55A + 0.55A = 2.9A なのでブレーカーの定格電流は 3A としました。 もっとラズパイを増設したくなってスイッチング電源を増設するとしたらブレーカーも取り替えないといけませんね。

AC 100V の部分の電線は 1.6mm の VVF ケーブルを使う予定なので許容電流は 15A はあるので問題なさそうですが、直流の部分の電線はどのくらいの太さのものを用いれば良さそうでしょうか。一番電流が流れるのは 5V 10A のスイッチング電源と端子台の間ですね。 この部分の電線は、交流と見分けが付けやすいように赤黒に色付けされた VFF ビニル平型コードを用いようと思います。1.25sq 以上の太さの芯線であれば許容電流的にも大丈夫そうです。

各ラズパイへの電源はスイッチング電源から端子台を経由して GPIO ピン経由で供給します。GPIO ピンから入力すると USB の規格以上の電流を流すことができますが、電源の保護回路をバイパスしてしまうようなのでピンの接続間違いなどには十分気をつけなければなりません。 USB モデムを接続して電波状況の悪い中で通信するといったような USB 端子経由での電源供給では電力不足になるような状況であっても、GPIO からの給電であれば十分な電力供給を行うことができます。

ちなみに Raspberry Pi 4 Model B の AC アダプタの定格は 5V 3A が推奨されているようですが、ネット上の情報などによると実際に流れる電流は 1〜2 A 程度とのことです。もちろんラズパイに接続する機器によってはもっと増えたりするかもしれませんし、アダプタの負荷率や USB ケーブルでの電圧降下などを考えて余裕を見ての推奨値になっているとは思いますが、やはりラズパイ 1 台あたり 3A 程度は流せるような構成にしていきたいと思います。

まず、GPIO ピンには QI コネクタ(デュポンコネクタ)というものを使ってピンヘッダーに接続します。QI コネクタは許容電流 3A のものを入手して利用しました(たまに小型サイズのものなどは許容電流 1A というものもあるようなので要注意です)。

また、この部分に用いる電線は UL1007 規格に準拠した AWG 26 のものにしました。これであれば許容電流的にも、QI コネクタのハウジングの物理サイズ的にもちょうど良さそうです。

Arduino や M5Stack はラズパイほどの電流は流れないのでそのあたりはもう少しお気楽に設計することができます。 スイッチング電源から Arduino や M5Stack の DC 入力に供給します。DC 入力のコネクタは Amazon などで購入可能です。

なお設計・施工の際にはこの内線規程という本を熟読して(すいません、嘘つきました。900 ページ以上もあるので全てを読んで理解するのはとてつもない時間がかかりますので実際のところは関係のありそうなところをつまみ食いして)参考にしました。参考にしたというか規程に従うようにしました。致命的な見逃しや勘違いなどは無いように気をつけたつもりではありますが、もし何らかの問題にお気づきになられた場合は優しく教えていただけますと幸いです。

この内線規程を読んでみると、電気工事士の筆記試験や技能試験で覚えたことの多くがこの本に書かれているということがわかります。 というか、逆にこの本に書かれていることのうち、本当に重要なごく一部の知識が筆記試験や技能試験で問われていたんだな、ということに気付かされます。

今後の電気工事士人生(大げさw)において重要なバイブル的な一冊になりそうです。

施工

さて、それではいよいよ施工です。

2x4 の SPF 材で枠を作り、そこに有孔ボードを固定しました。 有孔ボードに DIN レールをねじで止めて固定し、ブレーカーや端子台、スイッチング電源やスイッチングハブRaspberry PiArduino などを配置していきます。 大まかな配置を行ったらケーブルで接続していきます。

設計図では右側の DIN レールを 3 本にしていましたが、スイッチングハブの列の DIN レールはラズパイの列の DIN レールと共用としました。

というわけで出来上がったのがこちら!

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いかがでしょうか?

ちょっとラズパイの台数が少ないので若干迫力に欠ける気もしますが、今後ラズパイの台数を増やしていくにあたってもケーブル類のごちゃごちゃに悩まされずに整然と拡張していけそうな気がしませんか?

LAN ケーブルも自作してちょうどよい長さにするか、そもそも有線で接続するのはセットアップ時とか緊急時のみということにして普段は無線 LAN で接続するようにすれば、Ethernet ケーブル周りももっとすっきりできそうです。

電圧計とか電流計とかも常設したいなと考えているところです。

そんな風に夢が広がりますね😊

費用

計算するのが怖いほどお金がかかっています・・・

以下にご紹介する値段は、私の購入時の参考金額です。

まず部材編。

部材名 税込単価 個数 税込合計金額 備考
VVF 1.6mm 3C(公団用)100m 巻 ¥8,162 1 ¥8,162
コード 1.25sq 6m 赤/黒 ¥618 1 ¥618
フェルール端子(100 個入り) ¥2,750 1 ¥2,750 1.25sq のコードの両端に圧着してスイッチング電源や端子台に接続しやすく
UL1007 AWG 26 電線 赤 10m ¥541 1 ¥541
UL1007 AWG 26 電線 黒 10m ¥541 1 ¥541
QI コネクタ(1 極 20 個入) ¥351 1 ¥351 端子台側に使用
QI コネクタ用プラグコンタクトピン(オス)100 個入 ¥912 1 ¥912 端子台側に使用
QI コネクタ(2x3 極 20 個入) ¥1,099 1 ¥1,099 ラズパイ側に使用
QI コネクタ用コンタクトピン(メス)100 個入 ¥912 1 ¥912 ラズパイ側に使用
DC 電源コネクタ(L 型)x 10 ¥453 1 ¥453
ラズパイ DIN レールマウント ¥1,759 5 ¥8,795 現在在庫切れのようです。代替品
M5Stack Base15 産業用プロト基板モジュール ¥1,309 1 ¥1,309 M5Stack を DIN レールにマウントするためのパーツが入っています
DIN レール 110mm ¥1,075 1 ¥1,075 カット品なので定尺品より高いです。自分で切断できる方は定尺のものを買ったほうが安上がりだと思われます
DIN レール 500mm ¥774 2 ¥1,548
端子台(AC 100V 用) ¥2,298 1 ¥2,298
端子台(接地用) ¥1,507 1 ¥1,507
端子台(DC 5V/12V 用) ¥1,716 2 ¥3,432
スイッチングハブ 10/100Mbps 5 ports ¥7,678 1 ¥7,678
Ethernet ケーブル 0.5m ¥453 3 ¥1,359
ブレーカー ¥2,200 1 ¥2,200
ブレーカー用端子カバー(3 個セット) ¥782 1 ¥782
スイッチング電源 5V 10A ¥3,740 1 ¥3,740
スイッチング電源 12V 1.67A ¥2,750 1 ¥2,750
スイッチング電源 24V 1.0A ¥2,475 1 ¥2,475
小計 ¥57,278

これとは別に送料がかかっています。(複数のお店で複数回購入したので送料だけで結構な金額になっていると思われます)

このリストについて少し補足しますと、まずは電線ですが、VVF 1.6mm 3C の「公団用」といわれる絶縁被覆が黒白緑に色分けされているケーブルを購入しましたが、実際には 2〜3m しか利用しないのですがこれが一巻 100m 単位でしか販売されておらず、送料も合わせて 1 万円弱かかりました。 また直流部分の電線も最終的にはここに記載した 1.25sq のコードや UL1007 の AWG 26 の電線に落ち着きましたが、線の太さなどで他にもいろいろ試行錯誤したので数千円は追加でかかっているかもしれません。

また、ここに記載したもの以外に結束バンドやネジなどは自宅にあったものを利用しました。

それから、これらの部材を取り付ける土台となる 2x4 材やシンプソン金具、有孔ボード、ボード固定用の金具などは近所のホームセンターで購入しましたがレシートを捨ててしまったので正確な費用はわかりませんが1万円くらいはかかったかなと思います。コーススレッドはもともと持っていたものを使いました。

続いて工具にかかった費用です。 意外とお金がかかるのがこちらですね。

部材名 税込単価 個数 税込合計金額 備考
フェルール端子用圧着工具 ¥17,785 1 ¥17,785
ワイヤーストリッパー ¥2,890 1 ¥2,890
精密圧着ペンチ ¥3,435 1 ¥3,435
検電器 ¥2,763 1 ¥2,763
小計 ¥26,873

基本工具(ドライバー、ペンチ、プライヤー、VVF ストリッパーなど)はこの後にご紹介する資格取得費用のほうに含まれている「工具セット」のものを使いましたのでこちらには含めていません。

フェルール端子用の圧着工具は中華製のもっと安いものを一度購入したのですが、精度が全然ダメでかしめた端子が変な形になったりしてしまったので泣く泣くフェニックスコンタクト製の純正っぽい高級品を購入しました。

ワイヤーストリッパーはとてつもなく便利です。動作ギミックを見てるだけでワクワクします。 その次の精密圧着ペンチは QI コネクタの端子を圧着するための工具です。どちらも「エンジニア」という名前の会社の製品ですが、とても良いものですね。

最後は検電器です。これはまあこの規模の回路であれば無くても問題ないとは思いますがあると便利です。私はブレーカーの N の極にちゃんと中性線を入れられているかを確認するために使用しました。

このリストに上げた以外にも、2x4 材の枠を作るのに電動インパクトドライバ等を使いましたがそれらはもともと持っていたものを使用しました。 ノギスやピンセットなどもあると何かと便利だったりします。

最後に資格取得にかかった費用です。

費用名 税込単価 個数 税込合計金額 備考
第二種電気工事士試験受験費用 ¥9,300 1 ¥9,300
筆記試験過去問 ¥1,078 1 ¥1,078
電気工事士技能試験工具セット ¥11,483 1 ¥11,483
第二種電気工事士技能試験 練習用部材 ¥16,715 1 ¥16,715
免状発行用収入証紙 ¥5,300 1 ¥5,300
小計 ¥43,876

あとは細かいですがこれら以外にも試験会場を往復するための交通費や、複線図を書くのに便利なフリクションの 3 色ボールペンなども購入しました。

というわけで、新たに支出した分だけでも総額 13 万円近くかかった計算になりますね・・・😓 (試行錯誤した分も含めるとゆうに15万円は超えているかな)

あなたもラズパイクラスタを構築してみては?

電線などの部材はたくさん余っているし、工具も一通り買い揃えましたので本当は「私が作ってあげましょう!(有料で)」と言いたいところなのですが、そうするためには電気工事業法で定めるところの電気工事業者にならないといけなさそうで、そうなるためには最低 3 年間の実務経験が必要なのであった...。(電気工事業者になるには主任電気工事士という人を設定しなければならず、その人になるためには第一種電気工事士の資格を取るか第二種電気工事士になって 3 年の実務経験を積む必要があり、第一種電気工事士になるにも 3 年の実務経験が必要なのでいずれにせよ 3 年の実務経験が必要なようです。)

無償でならいいのかもしれませんが私もそんなに暇ではないですしやるからにはそれなりの対価は欲しいですしね😂

というわけで、みなさんも自分でがんばって「さいきょうの ラズパイ クラスタ」作ってみてくださいね!